石垣トマトについて
高知市から車で約1時間30分、山を目指して奥へ、奥へ。標高約500mの仁淀川町大植地区が「石垣トマト」の生産地です。周りは360度どこをみても緑鮮やかな山々。谷を見下ろすと澄みきった仁淀川の支流・長者川。言わずもがな、空気がうまい、そんな場所です。
「V字峡谷」と呼ばれるこの地形には平地がほとんどありません。先人たちは、斜面に幾重にも石を積み上げ段々畑を作りました。
いまは耕作放棄地となってしまった畑と石垣を覆うように、私たちは木造の「石垣ハウス」を築きました。そして、このハウスの中で冬でもすくすく育つ「石垣トマト」ができたのです。材料も、製材や建築、トマト栽培の人手も、すべて地のひと、地のもの。それが、われら「石垣トマト」です。
従来のフルーツトマトよりひと回り大きいサイズを一級品としている石垣トマト。
えぐみが少なくて酸味まろやか、皮までまるごとうまみを感じられます。
それでいて昔ながらの“トマトらしい”青い風味も持ち合わせている、味わいのバランスが取れたトマトです。
糖度は8〜10度ぐらいになります。
■栽培時期
夏トマト:4月中旬定植→6月中旬~11月末頃まで収穫(ピークは7月後半から10月いっぱい)
冬トマト:9月定植→12月末~5月末まで収穫(ピークは3~4月)
(定植から収穫までの期間が長く実がじっくり熟すため、夏より冬のほうが糖度が高い傾向にあります)
きれいな水、きれいな空気、山にある肥料となるもの、地域の人々……。この地域の人や文化を絶やさないためにも、どうにかここにあるものを存分に生かしたい。
そんな思いから石垣ハウス、そして石垣トマトを作り始めました。
決して裕福でなかった先人たちが耕した田畑は、“かや”や草がベースとなる腐植土を肥料とするのが主だったと思われます。そして注がれるのは谷を流れる清らかな水です。
石垣トマトはまだまだスタートしたばかりで、味わいの秘けつは調査研究中ですが、標高400メートルの高冷地の寒暖差と、石垣の熱、そして先人たちが耕した土壌が重要なカギを握っていそうです。
加温をしない石垣ハウスは、冬場は温度計とにらめっこ。氷点下でも石垣の蓄熱でプラス気温になるといえども、急激な冷え込みには温度計を何度も確かめずにはいられません。
逆に夏場は温度が上がりすぎてもいけません。通気窓を調節して温度調整をします。
トマトのおしりに出る放射線状のスジが糖度の高い証拠。
ピンク系よりもオレンジ系の色から赤色に染まって熟したトマトは、余分な水分が抜けうまみが凝縮しています。
高知県仁淀川町は、高知県の山間部、愛媛県との県境に位置します。水質日本一誇る清流・仁淀川の上流域であり、「V字峡谷」とよばれる高い山と深い谷が織りなす景色が特徴です。森林率は89%を占め、林業や茶の栽培がさかんな地域です。
熱を蓄える石垣のチカラ
トマトは通常、気温が0℃を下回ると枯れてしまいます。山間部で気温の低いこの地域では、ハウスの加温なしにトマトを育てるのは不可能とされていました。
しかし、それを可能にしたのは、先人たちが築いた「石垣」のチカラでした。
昼間に蓄えた太陽光熱や地熱を石垣が蓄熱し、日照時間の少ない気候時や気温の下がる夜間にも熱を放出しつづけることで、外気温より平均7~8℃高く保つことができています。
冬でも加温なし。イコール、燃料代がかからず、しかもエコ。そして甘い高糖度トマトを栽培できるハウスなのです。
現在も高知大学の協力を得て、石垣の効果について調査が進められています。
とにかく地元にこだわった
地域は、過疎化、高齢化が進み、耕作されずに荒れていく棚田が増えるばかり。なんとか地域の資源を生かして経済を生み出す仕組みをつくりたいと、この石垣ハウスを作るに至りました。
着工から5ヵ月で完成。骨組みは、鉄骨ではなく木材を使用。自分の山から自分で木を切り出し、これまた自ら作った製材所で加工。そして、地域の人たちと一緒にハウスを組み立てました。
石垣のかたちや畑(棚田)の大きさはさまざま。木材なら自在に設計できるので、敷地を有効に活用できるのです。ビニールは2重構造で、60cmの積雪にも耐えました。